今回はキャラクターをはじめとしたさまざまなデザインに3Dを活用しておいでの、キャラクターデザイナー 澤田 圭氏にお話しをおうかがいしました。
キャラクター
デザイナー
こんにちは、キャラクターデザインを中心に活動している澤⽥ 圭です。
自分で立ち上げたアパレルブランド「 waga-ma-mind ワガママインド 」のデザインや私個人の作品として流行や目的に合わせたオリジナルのキャラクターを描いたり、仕事として「こういうモチーフのものをキャラクター化してほしい」とか「今あるキャラをブラッシュアップしてほしい」といった依頼を受けたりしています。
実際に作っている作品は映像用のCGデータやフィギュア等の出力用モデルデータ、印刷物になるので、作業には3DCGのソフトやAdobe Illustrator などを使っているのですが、どのソフトを使うということにこだわらず相⼿や⾃分が望むキャラクターを形にする為のひとつの手段として使い分けています。
神⼾芸術⼯科⼤学で3DCGを専攻して、Softimage(ソフトイマージュ)とXSIを学んでいた時期の話になるのですが、そのゼミの生徒はみんな卒業制作では3DCGのアニメーション映像を作るので、⾃分もそのつもりで絵コンテを考えていたのですが、私が在籍していた頃の時代だと技術やマシンスペックの都合上、1年かけて2、3分の映像を作るのが限界でした。
1年もかけた後に発表出来るものが数分しかないという物足りなさと、卒展(作品の展⽰会)という多くの作品が一堂に会して展⽰される環境では、⾃分の作品を映像の頭から最後まで全部⾒てもらうのも難しい。そういったことを考えると、映像の作品ということ⾃体が得策ではないのではないか、と思いました。
そこで「⼀⽬で圧倒出来るようなものを作りたい」と考え、「キャラクターを1000種類描きます」と断言し、締め切りまでの残り3、4ヶ⽉、⼀⽇に10から20種類のキャラクターを描きました。
最終的には一体ずつ描いた1000種類のキャラクターを全て並べ、横10m縦4.5mの巨大な布に印刷し、クオリティ・密度・大きさで他生徒を圧倒する作品として大学で一番良い賞を頂くことができました。
多分そのことがキャラクターを描き続けるきっかけになったのだと思います。
その後250体ずつ4枚に再配置し、神戸の三宮駅のホームに3mの内照式看板として今も展示されています。
神戸芸術工科大学に在籍していた時はアーティストでもある志茂浩和先生のゼミに所属していましたので、3DCGのイロハはもちろん制作への向き合い方も学ばせていただきました。
志茂先⽣は顔が広い⽅でしたので、特別講師として神⾵動画の⽔崎さんを学校に呼んで下さったり、リアルなものからポップなものまで色々見せていただき取捨選択出来たことで、今の画風が確立出来たのだと思っています。
昔、「コンピュータグラフィックスワールド」という雑誌があったのをご存じですか?表紙に⼤きく「GW」と描かれていた雑誌で愛読していたのですが、神風動画さん、富岡聡さん、花房真さん、秋元きつねさん、YAMATOWORKSさん等そこで目を奪われたアーティストの皆さんが LightWave ユーザーでした。
XSIは高価すぎて個人では買えなかった為、自分も LightWave を覚えようと思ったのですが、ソフトが「モデラー」と「レイアウト」の2つに分かれているというのがどうしても慣れませんでした。そうしたときにモデリングに特化した「MODO」の評判を聞き、「それなら、そっちを勉強してみようかな」と思ってMODOを使い始めました。modo301からですね。
当時の⾃分はモデリングをどんどん突き詰めて勉強していきたいけど、アニメーションの⽅はまだ触る段階ではないという⾵に考えていましたので、MODOがモデリングに強いというのがすごく魅⼒的でした。画⾯のUIやパレットの配置なども学校で触っていたXSIとそんなに変わらない感じだったので、違和感なく使うことができました。
キャラクターデザインの仕事は、キャラクターを生み出すだけでなく、その後の展開として⽴体物もデザインすることが結構多いです。
キャラクターの⼈気が出ると、「キーホルダーにしたい」、「オブジェにしたい」という依頼をいただくので、そのキャラクターの⽴体物をデザインするのですが、平⾯の三⾯図を描いてもクライアントや造形担当にうまく伝わらないんです。それが⾃分の中ですごいストレスになった時期がありました。「じゃあ、うまく伝えるにはどうしたらいいか」というのを考えた時に3DCGの情報量を使うことにしました。
今のように3Dプリンタがまだ⼀般的でない時期から、⽴体物の⾒本を3DCGで回転させて⾒れるよう映像やweb3Dとして提出していました。3DCGは相⼿とイメージを共有するために使うことが多かったです。仕上がりを事前に⽴体的に⾒せることで、そこから仕事が広がることも多いですね。
今だと、3Dのデータを元にそのまま⽴体で出⼒してもらえるので、原案者が3Dソフトを使えるというのはかなり強いと思います。
以前、⻑崎のハウステンボスのアトラクションで使⽤する⼈形デザインの担当をしたのですが、そのお仕事でもキャラクターのデザインから最終的な⽴体物のモデリングまで⾏いました。
はじめにクライアントから「こういう⼥の⼦の⼈形を作りたい」という依頼があってデザインしたのですが、通常キャラクターデザイナーとしての仕事はそこで完了だと思います。でもその⼈形はアトラクションでとても重要な位置づけになっていて、お客さんが実物の⼈形を抱きかかえたり、⼤型のビジョンにCG映像として映し出されたり、様々な⾒られ⽅をする企画でした。普通は⽴体造型師さんやCGアニメーターさんがそれぞれの制作を担当することになるのでしょうが、⼈を挟むとどんどんデザインが変わっていってしまう。もちろん皆さんプロフェッショナルではあるんですけど、「可愛い」の基準が⼈それぞれなのでどうしてもばらつきが出てしまう。そのようにデザインが変わっていってしまうのがイヤだったので、私の⽅でキャラクターデザインだけでなく造形⽤のモデルデータや映像モデルの制作を全部担当しました。
⼤元のデザインをした⼈が⽴体物も映像も担当することで統一感が出せるというのは、自分としても納得できる形で最後まで仕事をできるし、クライアントとしても安⼼できるようですね。一番デザインに対して愛情を持ってる人が最後までやれるというのはとても良いことだと思います。
アトラクションはホラーの体感型になっていて、お客さんが抱きかかえる⼈形は震えたり、⾳を出したり、⽬が光ったりするよう体の中にいろいろ機械を仕込まないといけなかったので、デザインだけでなくサイズがとても重要だったのですが、最初に指定されたのはなんと眼球のサイズでした。
眼球のサイズと全長が決まった状態でキャラクターを作るというのはとても難しかったです。キャラクターは⽬を⼤きくすると可愛くなりますが、⽬のサイズは決められているので相対的に頭を⼩さくするのですが、そうすると頭身が高くなり年齢が高く見えてしまう。でも体の中には機械を仕込むための大きさが必要なので全長は変えられない。と可愛さと機能性のバランスをとるのにかなり悩みました。
あと分割を考えるのも⼤変でした。今回のアトラクションでは同じ⼈形を複数⽤意する必要があったので、型を作って複製するのですが、複雑な形の複製時にはどうしてもパーツを分割する必要があります。そして分割されたパーツを後から組み⽴てるのですが、その時にどうしても合わせ⽬が出来てしまうんです。
この作業を愛情持ってない⼈がやると適当なところで分割されてしまうので、⽬⽴つところに接合部の段が出てしまいます。今回の⼈形はなるべく分割ラインが出ないように心がけました。例えば、頭部では前髪と後ろ髪のパーツを分割しているんですが、あらかじめデザインとしてヘッドドレスを付けてそこから分割するようにして、分割ラインを⾒えにくくしています。
他にもギミックの担当者からスピーカー⽤の⽳のリクエストがあった時には、危うく前髪に無数の穴を開けられそうになったので、スピーカーの⽳というのが⽬⽴たないよう胸元にボタンをつけ加え、そのボタンの⽳から⾳を出してもらうようにしました。
専門外のことでも知識として把握できていれば提案が出来き、それが満足のいく仕上がりにつながると思います。