今回は、2023年1月に開催された3DCGコンテスト「MODO デジタルフードアワード #MadewithMODO」で最優秀賞を受賞なされた加藤智幸様にいろいろなお話をお聞きしました。
こんにちは、加藤智幸と申します。
現在、株式会社CAMOO(カムー)の代表として3DCG関連の仕事を様々な分野で行っています。
今はイベントで使用されるプレゼンテーション用の画像を作る仕事が多く、プレゼンテーションの内容にあわせてあらゆるものを3DCGで作っています。展示会のブースやそのディスプレイ、什器、そこに並べる商品などの画像の制作もトータルで請け負っています。
他にも建築系の内観パース/外観パースを受注しているのですが、実はもともと建築家を目指していたんです。
大学は建築学科で、ドラフターを使って手書きで図面を引くような授業とデジタル推しの教授のコンピュータを使った設計の授業があり、両方を学ぶことができたのはとても良い経験になりました。
コンピュータの授業では Mac で MiniCAD(ミニキャド)というCADソフトを使っていたのですが、Photoshop や Illustrator を使うCG制作も楽しくて、最終的に絵で食っていくことに決めました。
就職先ではマーカーやエアブラシを使う手描きのパース制作をやっていたのですが、時代の流れもあってほとんどCGで制作するようになっていきましたね。
その会社で 5、6年ほど経験を積んだあとに独立して今に至っています。
初めは、コンテストに応募する作品として「美味しそうでちょっと難しそうなもの」を作ろうと考え、いろいろなアイデアを出していたのですが、アイデアが固まらなかったんですよ。
でもクリスマスを過ぎたあたりに、子供のころ「クッキーの家」に憧れていたのをたまたま思い出したんです。それで「クッキーの家」を3DCGで作れば夢が叶うかなと思って作り始めました。
家の形ではないんですが、昔クリスマスになると母親が手作りのクッキーを焼いてくれていたんです。それで母が見ていた料理の本にクッキーの家が載っていたのをたまたま見つけてそういうものがあるというのを知りました。でも子供心にクッキーで家を作るのが大変そうなのは分かったので言っても作ってくれないだろうと。
大人になった今、3DCGでクッキーの家を作ることによって、そういった思いを自分の中で昇華したかったのかもしれません。
コンテストで賞を狙うという目的で「クッキーの家」を選んだわけではなく、作りたかったものが「クッキーの家」だった、という感じですね。
アイシングの部分は ZBrush でモデリングしています。砂糖のペーストでつららや模様が描かれているところです。作り始めたのが1月6日頃で1月16日の締め切りまであまり時間が無く、アイシングのモデルはMODOを使うと時間がかかりそうでしたので、今回は ZBrush を使用しました。
あと、粉砂糖を振りかけて作る雪のディテールの表現に Substance Painter の使用を検討したのですが、パーツが多くUV展開に時間がかかりそうだったので今回は MODO の機能でそれらを表現しています。
サンタクロースのろうそくは ZBrush でモデリングしています。これは一時間くらいでパーッと作りました。炎の部分は MODO のアセットを流用しています。
他の小物は MODO で作っていて、お皿やコップ、下に敷いてあるレースペーパー、モールの飾り付けを今回作り起こしています。これらのモデリングにはそれほど時間がかからなかったと思います。ナイフとフォークは使いまわしのモデルかもしれないです。
絵の雰囲気を重視していたので、周りの小物のディテールや配置にも気を使っています。
やはり、雰囲気ですね。周りの小物を含めて全体の空気感に気を使っています。
仕事では、こういうやわらかい雰囲気のものを作らないので、今回の作品は絵としてとても気に入っています。
この作品ではお菓子の手作り感が出るよう意識しました。
プロのパティシエが作ったようなお菓子ではなく、お菓子作りの素人が頑張って作ったクッキーの家を中心に、これからホームパーティーが行われるようなストーリーが伝わるとうれしいですね。
すべての仕事でメインツールに MODO を使用しています。モデルによっては ZBrush を使うこともあります。
会社員だった頃は Shade という3DCGのソフトを使っていました。当時は手描きのベースとなるシンプルな画像を Shade でレンダリングし、その上に手描きで描きこんで行くようなワークフローでした。でも、だんだんフォトリアルなレンダリングの需要が出てきていろいろなソフトを調べていたのですが、本当にたまたま modo 501 のセールを見つけて購入しました。
当時MODOのレンダリングはとてもきれいに感じて、とにかくそこに感動しました。あと、モデリングはすごく操作しやすかった印象があります。私はどちらかというとモデリングが好きで個人的な作品はモデリングだけで終わっているものも多くあります。
Shade から MODO への移行には一年半くらいかかりましたね。当時は今のようにYouTubeの解説動画や書籍がほとんどない時期だったので苦労しました。ちょうどその頃 MODO UserGroup Osaka の勉強会を知ってよく参加しました。
MODOはメインツールなので機能全般を使っていますが、なるべくデータを軽くすることを心がけているので、商品を並べたりするような場面でリプリケーターやインスタンス関連の機能を使っています。
あと、私はシェーダツリーがとても使いやすいと思います。レイヤーの表示/非表示で材質を切り替えたり、材質のバリエーションが作りやすいのが良いですね。
フィジカルベースのカメラが欲しいです。フィジカルカメラでシャッタースピードや絞りの調整ができるとシーンの明るさを調整しやすくなり、ライティングもしやすくなりますので。
あと、シーンの中に木がたくさんあるような時のパフォーマンスを改善してほしいです。
それからレンダラーを強化してほしいです。特にIBLを使用しても高速にレンダリングしてほしいのと、イラディアンスキャッシュの設定を簡単にしてほしいです。外部レンダラーを使用しても良いのですが、外部レンダラーの選択肢が少ないと思います。
僕はモデリング好きなのですが、MODOは直感的にモデリングを進めることが出来るのでモデリングの作業が楽しくなると思います。余分な手間が無くわずらわしさは少ないように思います。言葉にするのが難しいのですが、作りたい形に向かう考えと操作が近い気がします。
単純に作る喜びというのがあると思うのですが、MODOはそういった経験を得ることのできるツールだと思います。