Luxologyのギャラリーには、日比氏がmodoで制作されたインテリアデザインのCG作品が多数展示されています。また、2007年11月に恵比寿のSPAZIOで開催いたしましたmodo 301ラウンチイベントにおいても「建築におけるmodoの活用」で登壇していただきました。今回は建築業界におけるCGの役割についてヒビコーディネーション代表 日比 隆志氏にお話をお聞きしました。
私は以前にカタログなどの広告撮影の現場でフリーのインテリアコーディネーターを約20年間やっていました。CGアーティストとしてよりもインテリアコーディネーターとしてのキャリアの方が長いわけなのです
3DCGは、コーディネートのプラン作成に使い始めたのがきっかけです。
それまでもPhotoshopを使ってプランを作成し、プレゼンテーションをおこなっていましたが、3DCGを使うことでカメラから見た状態をシュミレーションできると考えたからです。私がインテリアコーディネーターからCGアーティストへと方向転換したように思っている人もいますが、私の中では変わらずに、同じ仕事をしています。それはスタジオでやっていたことと同じことを、コンピューターの中でやっているだけなのですから。
以前にインテリアコーディネーターをしていた関係もあって、やはり建築やインテリアに関連するカタログやポスターなどのCG制作が多いですね。あと、インテリア雑誌にCGを使ってインテリアの解説を執筆することもあります。
建築業界と広告業界も含めてのCGについてお話したいと思います。
インテリアに関連するカタログ撮影はスタジオに多数のセットを作って、大量の家具や小物を小道具として用意するわけです。膨大な費用もかかりますし、撮影が終わったセットは廃材なってしまうので環境面からもあまりいいことではありません。そのような撮影をフォトリアルCGに切り替えることで、コストダウンになりますし、環境にもやさしいというわけです。さらに、写真撮影の場合はプレゼンテーションのビジュアルイメージが撮影の段階でうまく表現できないこともありますが、フォトリアルCGの場合は、プレゼンテーションの段階でテスト画像をビジュアルイメージとして使用することも多いのでより完成に近いイメージでプレゼンテーションできるわけです。
また、建築関係では様々なシミュレーションにおいてもCGは非常に役立ちますね。
例えば、数種類の床材や壁材の組み合わせを変えて検討するのもCGなら簡単ですし、フィジカルサンを使えば実際にどのように日が当たるかを再現することができます。
しかし、以前はイラストとして扱われていたCGも、現在では写真と同等の扱いになってきているので細かいところまでリアルさを要求されるようになりましたね。
私の仕事の場合は、写真に置き換わるCGというのが前提なのでやはりライティングにはかなりの神経を使います。現実世界においては、光がないと真っ暗で何も見えません。物体に光があたることでその表情を表すわけなので、光のあたり方は非常に大切です。
また、インテリアなど室内のシーンでは直接光と間接光のバランスに気を付けています。
特にはないですが、インテリアコーディネーターの仕事の前にファッションデザインの勉強をしていた頃があって、そのころにチェアのデザインに興味を持ちはじめました。チェアは素材の種類もデザインも豊富で見ているだけで楽しいですよ。ファッションデザインとチェアのデザインに何か共通するものを感じたのだと思います。それをきっかけにインテリアデザインの方向に進んだようなものなので、影響を受けたのは人ではなくチェアでしょうね。
そのような質問はいつもよくされます。
内容によって様々なので一概には言えませんが、画像一点につき短ければ2、3日。長ければ1週間ぐらいと答えています。ちなみに、仕事としては数点から数十点制作することが多いので、一つの仕事としては2、3ヶ月かかることもあります。
はじめての3DCGソフトはエイリアススケッチです。その後レイドリームデザイナー、Shade、CINEMA4Dを経て現在に至ります。
Shadeはプレゼンテーションによく使いましたね。ちょうどその頃にラジオシティが搭載され、フォトリアルCGにのめり込みました。セット撮影のライティングの知識はあったので、間接光を使ったGIレンダリングの方が私には簡単でした。その後、CGアーティストとしての活動をはじめたのは CINEMA4Dを使いはじめてからだと思います。
私の所のコンピュータはすべてMacです。
現在、CG制作には主にMac Proを3台使っています。一台がモデリング用で、2台がレンダリング用という構成です。以前はレンダリング用に4台のコンピューターを使っていましたが、modoを使うようになってからは2台で同じ作業ができるようになりました。
それでもレンダリングにはやはりパワーが要求されるので、カスタマイズモデルで最速モデルをオーダーしています。あと、外でプレゼンテーションやデモをすることもありますので、MacBook ProとMacBookも使います。
modoを使い始めたのはレンダリングが搭載されたmodo 201からです。
きっかけは、速くてきれいなレンダリングとリアルタイムプレビューに興味があったからです。
私にとって3DCGソフトは表現する手段なのです。考えを形にする道具といった方がいいかもしれませんね。ですから、操作は直感的であってほしいし、思考の妨げになってほしくないわけです。
以前に他の3DCGソフトを使っている頃はどうしてこんな面倒な手順を踏まないといけないのかと思う操作が多々ありましたが、その点、modoはすごく直感的に操作が出来ますね。周りのアーティストからもmodoを使い始めてからモデリングが楽しくなったという声をよく聞きますが、それだけアーティストがどのような操作性を望んででいるのかを実によく把握できているのだと思います。
また、リアルタイムプレビューのおかげで見ながら仕上げていくことができます。ライティングにこだわる私としてはライティングの調整をリアルタイムで確認できるのもすばらしいところです。
クロス(布)をうまく扱える機能があればうれしいですね。
金属やプラスチック、ウッドなど硬い製品なら写真に近いCGが比較的簡単にできます。しかし、クロスなどの柔らかいものはなかなか難しいものです。他のソフトにはクロスシュミレーションなど物理的なシュミレーション機能があるソフトもありますが、意図的に形を操作できるものではないように思います。例えば一枚のクロスから縫製するようにカーテンができたり、ベッドのシーツを起きたあとのようにしわを作れたりとか、一枚のクロスの大きさを変えずに自由に形を変えることができれば最高ですね。