■早速ですが、バッファロー・ドリームス・ファンタスティック映画祭での「優秀アニメーション作品賞」の受賞、おめでとうございます。
ありがとうございます。
■この作品では、監督・脚本・アニメーションなどを担当されたとうかがっておりますが。
そうですね。音響以外の全てを担当しています。音響は今回サブリメイションさんにお願いしています。
■それでは自主制作短編アニメ「地下城の魔物」(Horror of the Underworld)についていろいろお聞きしたいのですが、その前に鈴木様のことをご存じない方のために自己紹介をお願いできますでしょうか。
はい。現在はフリーランスでCGディレクターをやっているのですが、はじめは特撮映画で使用されるような造形物を作る仕事をやっていました。ゴジラ対ビオランテに出てくる怪獣を作ったり、CMで使用される造形物も作ったりいろいろやりましたね。
そのころからAMIGAのLightWaveでCG作品を作っていたのですが、そのあとにGONZO(ゴンゾ)というアニメーションスタジオに所属して、CGディレクターをやっていました。
■「地下城の魔物」の制作を始められたきっかけについて教えていただけますでしょうか。
10数年前の話になるんですが、とある制作会社さんと商業作品として1時間くらいのCGアニメーションの企画を考えていて、それが元になっています。
当時は厳しい状況で、一緒に考えた制作会社さんの方で制作の目途が立たなくなって、売り込み用のPV映像を自分で作って企画会社や制作会社に持ち込んだんですがなかなか条件が合わなかったんです。
それで「これはもう一人で作るしかないな!」と思い、本格的に作り始めました。それが今から8年ほど前になります。
■制作の中で苦労なされた点をお聞かせいただけますか。
個人制作の場合、物量を控えるために登場人物を2、3人位に抑えたりするんです。
しかし今回の作品のベースは登場人物が多く規模も大きい設定でしたので、物量を減らすために舞台をなるべく地下だけにしたり、通路を二つ三つに絞ったり、そういう工夫をしました。そしてお話を整理し、アクションシーンだけをギュッと詰め込んで26分の尺にまとめました。
■制作の流れについてお教えいただけますか。
一番最初に40分の絵コンテを最初から最後まで描いたんですが、一旦捨てました。そして次はコンテを無視して、カットを中心にしてどのような絵にするかを考えてから全体の流れを作りました。個人製作ならではの進め方だと思います。
■CGの制作に使用されたハードウェアについてお教えいただけますか。
ハードウェアに対しては特にメーカーやパーツのこだわりはありません。一般的なショップブランドのWindowsコンピュータを使っています。8年前から制作しているので何回かは買い換えています。
■CGの制作に使用されたソフトウェアについてお教えいただけますか。
LightWave, messiah Studio(メサイアスタジオ), Modoを使っています。あとBlenderも2カットだけ使ってますね。
モデリングをModoで行い、LightWave と メサイアスタジオ でアニメーションを付けて、 レンダリングをModoで行うという流れが多いです。
メサイアスタジオはスタンドアロンでも使用できるんですが、LightWaveのプラグインとして使っていて、LightWave の中のメサイアスタジオでモーションを付けてから、LightWave の MDScan で MDDキャッシュを書き出し、Modoでレンダリングしています。キャラクタやロボットなどのアニメーションは全てこの流れで作っています。
ジオメトリのあるアニメーションを渡す場合はMDDキャッシュを使い、カメラのようなジオメトリの無いアニメーションを渡すときにはFBXを使う感じですね。
あと血糊のシーンに RealFlow を使って、炎とかのエフェクトは LightWave の TurbulenceFD を使っています。
群衆が飛び回るカットではModoのパーティクルを使っています。最初LightWaveでやっていたんですがデータの受け渡しが難しいこともあり、Modoのパーティクルを使うようになりました。
■レンダーファームは使用していらっしゃいますか。
はい。4台ほどのマシンを使ってレンダリングしてます。ネットワークレンダリングのコントローラは ButterflyNet を使用しています。
■コンポジットは After Effects をご利用でしょうか。
そうですね。Modoでレンダリングを行うときに「Diffuse」、「Specular」、「Reflection」、「Transparent」、「SSS」など9種類に分けてレンダリングし、それをAfter Effects でコンポジットして調整している感じですね。
■お話を聞いているととても一人でできるような物量ではないですね。
なので8年以上かかったんです、はい。
■「地下城の魔物」の今後の展開についてご予定などお教えください。
日本語版が未公開になっているのと、英語版の配信先が今一部の地域(国)でしか見れないので、その辺をどうしようか検討しているところです。
英語版については、今XUMO(シュモ)とVimeoでの配信が予定されており、ウェブ配信を手配するFilmHubという会社に登録してセールスをしてもらっています。配信先によっては「こういうシーンはNG」のような規約があるので、カットを差し替えて演出を変更するようなこともやっています。
日本語版はどうしようかと考えている最中ですね。今年(2022年)の夏までには何らかの形で日本語版を公開したいなと思っています。YouTubeに製作途中の動画をアップしていたんですが、海外のほうが受けが良かったので海外を優先して動ているような感じではあります。
■日本での公開を楽しみにしています。
ありがとうございます。
■それでは、ここからはModoのお話を中心にお聞かせいただければと思います。Modoはモデリングとレンダリングにご利用いただいてる感じでしょうか。
そうですね、モデリングとレンダリング、あとパーティクル関係にも結構使っています。
■Modoを利用されるようになったキッカケをお教えください。
使い始めたのは10年以上前かな。当時3Dペイントの機能を目当てに使い初めました。
LightWave と相性がいいと聞いてModoを導入して、はじめは3Dペイントの機能だけを使っていたんですが、使っているうちに LightWave と Modo の行き来が面倒になって、Modoでモデリングを始めました。そしたら割とモデリングしやすかったので、モデリングの作業もModoで行うようになった感じですね。さらに使っているうちに、レンダリングが結構きれいだなと思って。実写調の絵ではModoのレンダラーがいい感じだったので、レンダリングにもModoを使うようになりました。
V-Rayのようにネットワークレンダリングで使用するノードに対してコストがかからないし、少し時間はかかりますが品質についてもV-Rayと張り合うくらい綺麗だと思います。実写の仕事でModoはかなり使ってますね。
あとカメラ視点からのプロジェクションで3Dペイントできるじゃないですか?それも結構いいので、実写関係の仕事と相性がいいと思います。
■Modoのほかに利用されてらっしゃるソフトウェアをお教えください。
LightWave とメサイアスタジオ。これは外せないですね。
あとBlenderも最近使い始めています。「地下城の魔物」でも使っていて、確か Blender から Alembic で LightWave へデータを持って行って、LightWave で MDScan したデータを Modo に持って行く流れでした。
■Modoと他の3DCGソフトウェアと比較していかがですか?
Modoは基本設計自体が新しく作られているという感触がします。他のソフトは古い設計の土台へ、無理やり新しい機能を追加しているような印象を受けますね。
■今後のModoに期待する機能、要望をお教えいただけますでしょうか?
アニメーションの機能強化かなと思います。Modo単体じゃなくても他のサードパーティさんが頑張ってくれればなぁというのはありますね。
BlenderのアドオンにAutoRigというのがあるんですが、それがものすごく優秀なので是非 Modo に対応してほしいですね。設定が全然違うから難しいかもしれませんが。
そういった点も含めてアニメーション関連の機能を強化してほしいですね。
■これからModoを使われる方、使い始めた方に一言アドバイスをいただけますでしょうか。
Modoはコンセプトモデルやインダストリアル系のデザインで注目されているイメージがありますが、パーティクルやエフェクト関係が意外と強くて実写と相性がいいんですよ。意外とっていうのは失礼かもしれないですが。
「地下城の魔物」でもModoのパーティクルを使っていたのですが、すぐに忘れてしまうので最近またMODO JAPAN グループのチップスサイトやポリゴノートさんのサイトで調べながらやっています。
全部は理解できてないんですが、これらのページでやり方を見ながらパーティクルのシーンを構築しています。作例があるのでいいですね。
アドバイスと言えるかどうかわかりませんが。Modoのパーティクルはいろいろ細かく設定できて素晴らしいなと思ってます。
■本日はどうもありがとうございました。