今回はジェネラリストとしてお仕事をしながら、自主制作のアニメーション作品にMODOを活用しておいでの五藤 彰氏をお迎えし、MODOを導入されたきっかけや制作の流れについてお話しを伺いました。
京都市立芸術大学卒業。大学ではコマ撮りアニメーション等様々な表現を試みる。その後、白組ヒューマンスタジオでCGを学び現在は都内のCGプロダクション(株式会社D.A.G)
京都市立芸術大学を卒業しまして、その後に東京に出てきました。東京では白組ヒューマンスタジオというところでCGの勉強をさらに深くさせていただき、それから今の会社D.A.Gに落ち着いたという感じになります。
大学ではアニメーション全般を学んでいました。コマ撮りの人形アニメーションをやったり、手書きのアニメーションをやったり幅広かったですね。私自身「ロード・オブ・ザ・リング」という映画が好きで、見ている間は没頭出来て別の世界に連れて行ってくれるようなそんな映画を作りたいと思っており、CGを使えばそういう世界を自分で創造できるのではないかと3DCGも学んでいました。
当時は Maya 2013 と XSI を使っていました。
そうですね。最初の3ヶ月はチュートリアルといいますか、課題のようなものがあり、そのあとインターンとして白組のかたと一緒に仕事をしながら学ぶという感じでした。白組ヒューマンスタジオには一年在籍し、今はD.A.Gに所属しています。
一言でいうとジェネラリストですね。モデリングからアニメーション、レンダリングといったいろんなことをさせてもらっています。仕事では、Max, Maya, MotionBuilder, MudBoxあとはPhotoshop, After Effectsを使って制作をしています。仕事の内容はプリレンダーのアニメーションが多くて、中でも遊技機やゲームのアニメーションが一番多いですね。今やっていることは大学時代から積み上げてきた様々な映像や、技術の知識がベースになっています。
白組ヒューマンスタジオにいたころにお世話になっていたかたが「MODOは凄く良い!」ということをおっしゃっていて、ずっと興味を持っていたんです。それでその後自宅でCGを始めようという時にMODOを選択しました。当時は、MODO 801だったと思います。PIXERやWetaの「アバター」の制作でも使われたという点も、魅力的に感じましたね。映画が好きなので。
それと会社でやっていること以外のCGを知りたかったというのもあります。多くのソフトウェアに触れると自信がつく気がするので。あとホームページのチュートリアルや、トレーニングキットも充実していて、特にホームページのチュートリアルは分かりやすかったので、独学でも習得できそうな気がしました。最初はビューポートのトラックボール回転に戸惑いましたが慣れるととても使いやすく、感覚的に作業できる点が私の制作スタイルにとてもあっていると感じました。また、レンダリングビューも結果がすぐに確認できますし、サンプルのマテリアルも充実していて初めてでも楽しく覚えることができたのも、作業を続けられた理由だと思います。アニメーションではポーズツールも便利でしたね。
五藤 彰氏 最新作 「TRY-MEN 4」
きっかけは大きく3つあるんですけど、まず一つ目は、自分の感性の確認です。大学の時は、映画を見たときのような未知の世界を経験する感動を自分でも作りたい!という思いで、自分の好きな世界をひたすら追及する感じでした。社会に出てからは、映像表現について学ぶことは本当に多く、自分一人では知らなかった技術等をたくさん知ることができたり、仕事で長くCGに接してスキルアップできる反面、あまりの情報量の多さに自分の本当に好きなことを忘れてしまいそうな怖さもありました。なので自分の好きなことを忘れないためにきちんと作品や言葉にして自分の感覚を確認しておこうと思い、自主制作を始めました。「TRY-MEN」はそういった部分が大きいですね。
もう一つは自分のスキルアップの手段としてです。会社ではジェネラリストとして働いていて、一つの作業が終わると全く別の作業をすることも多いので、ついつい学んだことを忘れてしまったりするんです。なので会社で学んだことを忘れないよう反復練習をかねて、自分の作品に作りにも技術を活かそうと思いました。
三つ目のきっかけですが作品のテーマを伝えたいというのがありました。「TRY-MEN」は観客を鑑賞中に別の世界へつれていけるような作品を目指したエンターテイメント作品ですが「強く生きること」というテーマがあります。僕は普段からあまり主張するタイプの人間ではなく、人に迷惑をかけることを恐れてしまうので、周りの目を気にせず、ひたすら自分のやりたいことに没頭するスタイルに憧れがあるんです。「TRY-MEN」というキャラクターを通して、僕の考える「強く生きること」というのを表現したかったのです。
そうですね。5、6の構想はちょっと考えています。「TRY-MEN」は15人のチームで構成されていて今7人まで出演しているので、他のメンバーも出るまで続けようと思っています。でもちょっと別のことをやろうかなとも考えていて、もっと映像表現を深くするためにアニメーションを重点的にやっていこうかと思っています。アニメーションというのは演出的な要素がかなり強いので、アニメーションやカメラワークをやっているとなぜカッコよく見えたのかといったことが分かるんです。今はジェネラリストとしてやっていますが、将来CGデザイナーとして武器になるようなアニメーションにも注力しようと思っています。
そうですね。モデリングだけではなくてアニメーションやエフェクトもMODOでやっていますね。やれる要素があるとやろうと思っちゃうんですよね。やらないと気が済まないんです。
制作時間の確保が大変でしたね。平日は2時間作業して、休日は8時間作業するという風にやっていました。電車での移動中にチュートリアルを見たり、アイデアを出したり、作曲をしたり。あとマシンが自宅の一台だけなのでレンダリングが大変でしたね。会社に行く前にレンダリングを投げるようにしていました。「TRY-MEN 4」はモデリングを始めたときからかぞえると2年かかりました。
私は一人でやっているので、もしかしたらすでにある機能なのかもしれないですが、ウエイトの情報だけを保存できるといいなと思います。例えばスケルトンを追加したり、階層を足して、スキンをかけ直すときにもう一回ウエイトを割り振り直すのですが、そういうのを一括でできる機能が欲しいです。Maxは名前さえあっていればできるんですよ。MaxにあってMODOに無い機能は欲しいと思います。Maxの様なスケマティックビューや、Mayaのようなバッチレンダーも欲しいですね。あとスカルプトやアニメーションについても機能が向上するといいですね。
会社でMaxやMayaを使用されている方は多いと思うのですが、そういった環境だからこそMODOのような違うソフトを使ってみるのがいいのではないかと思います。ソフトが違っても基本は変わらないので、普段と違った操作のソフトを触るとリフレッシュできると思いますし、モーフやスキンなどのデータの持ち方もMODOは特殊な気がするので、CGに対しての理解が広がるり、考え方がやわらかくなる感じがします。あとMODOはとても感覚的に作業できるので一人での制作にも向いていると思います。モデリングからすぐにスカルプトに移れたり、レンダリング結果を確認しながらマテリアル調整したり、気の向くままに作業できるのはとても楽しいです。