今回は大阪でインディーズゲームの制作にMODOを利用しておいでの六水条 剣様にお話しをおうかがいしました。
六水条剣(ろくすいじょうつるぎ)と申します。
個人でインディーズゲームを制作しており、企画やデザイン、3Dモデルのアセットの制作からゲームシステムの構築などほぼ全般を一人でやっています。現在、関西ゲーム制作部(関ゲ部)さんに時折お邪魔しながらゲーム制作をしております。
興味を持ち始めたのは学生のころですね。
もともと絵を描いたりしていたので、何かを作るというのは好きだったんですよ。ゲームも好きだったので、自分で描いた絵でゲームがつくれたら楽しいだろうなという動機だったと思います。ちょうどそのころ、雑誌広告で「デジタルロケ」という国産のオーサリングソフトが載っていて、「デジタルロケを使ったらゲームがつくれる!」という情報を見て、自分で買ってそれが始まりでした。
それで、デジタルロケで「FateAxis」という格闘ゲームを作って、インターネットで公開していたんですが、100円ショップのダイソーさんから「うちのブランドで売らないか」とオファーがありまして、ブラッシュアップしたものを製品化してダイソーさんから販売しました。
そうですね。ダイソーの営業の方からメールがきまして。「よかったらうちで出しませんか!」という感じでしたね。
「FateAxis」のあともいろいろなゲームの制作を続けていたのですが、だんだん「デジタルロケ」の表現に限界を感じ出したんです。「デジタルロケ」は今でいうゲームエンジンで、モデリングからモーション、プログラミングまでオールインワンでできるツールだったのですが、だんだん時代に合わなくなってきたんです。それで新しいツールを探していた時に知り合いから教えてもらったのがMODOだったんですよ。
modo 601から701のころですね。キャラクターアニメーションが搭載された時期だったと思います。
最初は Unity と連携して作ろうと思っていたんですよ。でも、当時の Unity はゲームを作るのにプログラムのコードを書かないといけなかったので、他のツールを探す傍(かたわ)らでMODOでゲーム用の3Dモデルを作っていました。
そうですね。2015年に Unreal Engine 4 が無料化され、作例のゲームのクオリティも非常に高く、これなら新しい表現ができるんじゃないかということで触りだしました。そのころ既に MODO で3Dモデルを作って Unreal Engine に読み込むという流れで制作をしていましたね。MODO 801、901 の頃だったと思います。
ゲームレイアウトにある「FBX出力」の機能を使っています。
基本的には、ひとつひとつデータを確認しながら Unreal Engine に送るようにしており、「Unreal Bridge」は使っていません。サイズや雰囲気を確認するための仮のモデルの場合には「Unreal Bridge」を使うこともありますが、最終的にはMODOのシーン内のアイテムを個別に「FBX出力」するという今のワークフローに落ち着きました。
ただ、2,3日でゲームを一タイトル作る Game Jam (ゲームジャム)というイベントが全国で開催されているのですが、そこではクオリティよりもスピードが重要なのでそういったケースでは「Unreal Bridge」はすごく役に立つ機能かもしれませんね。二つのモニタを並べ、それぞれUnreal Engine、MODOを表示させてチームでディスカッションし、すぐにモデルを送ったりできますし。
そうですね。基本はまったくコードを書いていません。プログラム的な知識とアルゴリズムは理解しているので、それを元にブループリントで制御するよう組み立てています。
Substance Painter と Substance Designer を使っています。あと Marvelous Designer も少し使っています。Substance Painter / Designer はテクスチャリングの作業、Marvelous Designer は衣装や背景をモデリングする際のラフモデルの制作に使っています。
やっぱりキャラクターですね。モデリングだけではなくてセットアップまでやらないといけないので苦労するんですが、完成してうまく動いたりしたときは楽しいですね。
でも最近は背景も好きになってきています。いろいろなパーツを先に作っておいて、それらを組み合わせて背景を作るというのは自分に合っているような気がします。
まず大まかにラフなモデルを作ってそれをパーツや要素に分解し、MODOでモデリング、そして Unreal Engine で配置するという手順でやっています。ゲームエンジンで使用する背景のモデルの制作には、例えば簡単な部屋でもある程度のクオリティが必要だと半月から一か月はかかると思うんですが、MODO と Substance Painter を連携してこの手順で制作すると数日くらいで完成しますね。
MODOはモデリングやアニメーション、UV展開のようないろいろなツールがレイアウト、パレットで分かりやすく分類されていて使いやすいですね。タブですぐに切り替えもできますし。今日はモデリングをやろう、今日はUV展開をやろうといった作業の切り分けもできていいと思います。
あとカテゴリーが違っても操作が共通しているのもいいですね。3Dモデルに対しての作業とUVマップに対して行う作業は、選択やトランスフォームなどの編集を同じオペレーションで行うことができます。こういうことをしたいときに、このツールが使えるんじゃないかという流れを頭の中でつくりやすい。なのでサッと作業ができる、結果的に早く作れる、というのがありますね。これは他のツールではあまり感じなかったことです。
モデリングに関しては一通りの機能がそろっていて使いやすいんですが、テクスチャの機能、アニメーションの機能を強化してほしいです。
まずテクスチャについてですが、今ゲームなどで使用するモデルは複数の画像をマッピングする必要があるので、それらをまとめて作ったり出力したりできるといいですね。
Substance Painter や Substance Designer だと一回の工程でベースマップ、ノーマルマップ、ハイトマップなどが全て作れるんですよ。その作業スピードを考えるとどうしても Substance Painter や Substance Designer を使うことになるので、そういった作業もMODOで出来るといいなと思います。
あとアニメーションについては細かい話になるんですが、IKで制御されているスケルトンの角度等が簡単に取得できるといいですね。現状でもノードを組んで取得したり、コントローラを追加すれば制御できるんですが、IKがONのときでもFKのようにポーズを設定できるといいなと思います。
ゲームに限らず何かを作るときには必ずトライ&エラーで作業を進めることになります。そのトライ&エラーの数をどれだけこなせるかが、成長する近道だと思うんです。MODOだとトライ&エラーの繰り返しがすごく簡単にできて、モデルの作成と修正/調整を短時間に行うことができます。イメージした作業工程に沿って手を動かせばモデリングを進めることができますし、ゲームエンジンとの連携も良いので作ったモデルをすぐに確認できる、それが簡単にできる、そこが一番の魅力だと思っています。ちょっと作ってみたいなとか、やってみたいなという人には是非トライしてほしいです。
あと公式サイトに色々な「Tips」が上がっているのが便利ですね。最近のソフトにはいろんな機能があるんですが、なかなか全てを覚えるのが難しいので、ああいうサイトでピンポイントに、しかも日本語で丁寧に解説してくれる情報が得られるので大変助かります。
Unreal Engine でいろいろなゲームを制作していきたいと思っています。
今ちょうどインディーズゲームが脚光を浴びており、いろいろな企業がゲームの制作者と提携してゲームをリリースしていたりするので、そこに提供できるような作品を作っていきたいなと思っています。ちょうど今年の11月にある「デジゲー博」というイベントに向けてひとつタイトルを作っているところでして、今このタイトルを制作しているワークフローが確立できれば次回作はもっとスピードアップして作れるかなと思っています。