今回はモックアップや木型(きがた)の制作をしておいでの株式会社 ミナロ様にMODO導入の経緯についてお聞きしました。
株式会社 ミナロ 代表取締役
株式会社 ミナロ 工場長
はじめに 株式会社ミナロ 代表取締役 緑川様へミナロ様の事業についてお話を伺いました。
弊社では木型(きがた)、モックアップ、モデル、検査治具の制作などお客様のニーズに合わせてさまざまなことをやっています。 他にもケミカルウッドや硬質ウレタンのオンライン販売も行っています。
あと、弊社を語るうえで欠かせないのが「JMRP(全日本製造業活性化計画)」と「コマ大戦」です。
「JMRP(全日本製造業活性化計画)」についてですが、メカニックデザイナー 大河原 邦男(おおかわら くにお)氏がデザインされた オリジナルロボット「iXine(イグザイン)」を中小製造業の共有資産として活用し、管理している団体となっており、 そちらに代表として携わっております。
われわれガンダム世代からすると、そのメカデザインをされた大河原氏は神様のような方です。
大河原氏とは以前よりいろいろなご縁があり、大河原氏がメカデザインされたオリジナルロボットを作ろうという企画があって 進行していたのですが、一時期いろいろな理由でストップしかけたんです。 でも我々としてはどうしても完成させたいという思いがあって大河原氏にご承諾いただき「JMRP(全日本製造業活性化計画)」 として再始動し、今の形になりました。
いま海外にあってお見せできないのですが、高さ2m強といった大型の「iXine(イグザイン)」のモデルの制作もうちでやりました。
「コマ大戦」については全国の中小の製造企業が自社の作成したコマを持ち寄って戦う大会となっており、 そちらを運営している協会の会長をしています。
競技のルールですが、コマの大きさが直径20mm以下、全長60mm以下であれば、材質・重さ・形などに制限はありません。 製造企業が本気で設計し、いろいろな技術を注ぎ込んで作成しているので、いろいろなものが出てきますね。 コマを回すと羽が開いて変形するような仕掛けが施されているものもあります。
2012年に第一回全国大会が開催されたので、もうすぐ5年目ですね。2015年からは世界大会も開かれるような規模になりました。 グレード別の大会や予選大会は日々行われており、次回の全国大会は2017年4月に横浜での開催となります。 是非見に来てください。
ここからはMODOをご利用いただいている工場長の高尾様にお話を伺いました。
木型(きがた)やモデルの作成が主な仕事なのですが、その内容は多岐にわたります。
うちでやっている仕事のひとつにデザインモデルの試作品を作るというのがあります。デザイナーさんが自分でデザインした車のデザインの形を試作段階で確認したいという場合には、弊社で3Dのデータを預かって、それを弊社工場内の加工機で削り上げて納品するというような流れになっています。
あと実際に水槽に浮かべて使う実験用の船の模型も作っています。タンカーのように何百メートルも長さがあるような船を数メートルのモデルで作成したりもします。
ほかに工業製品の制作段階でその形が正しいかどうかを調べる検査治具も作っています。
色々なケースがありますね。デザイナーさんから自作のモデリングデータを頂く場合もありますし、手書きのスケッチだけ頂いてそれをこちらでモデリングするときもあります。
メンバーそれぞれの得意分野はあるのですが、ひとつの仕事の中で発生する全ての工程、つまりモデリング・切削・塗装・仕上げといった一連の作業を皆が出来るようにしています。
ただ、工業CADを使う工業製品はどのスタッフも出来るんですけど、キャラクターや有機物のようなモデルは工業CADではなかなかデザインができないのです。その場合ポリゴンで作るということになるんですが、私の他にポリゴンモデリングできるスタッフがいないのでそこは全て私が担当しています。
ポリゴンでのモデリングには今まではLightWaveとZBrushをメインに使っていたのですが、LightWaveの性能に不満に思う部分がありまして、その不満点を解消できるソフトがないか色々探していました。
そこで以前から名前だけは知っていたMODOを体験版で試したところ、LightWaveに比べていろいろ使いやすい印象を受けました。
仕事柄、モデリングがメインなので、レンダリングやアニメーションの機能はほとんど使いませんし、サーフェイスやディスプレースメントなど画面の中だけで凸凹を表現する機能も必要ないんです。実際にモデルが凸凹していないと意味が無いですからね。
そういう点でMODOのモデリング機能では神がかっているのではないかと感じました。
また、MODOはショートカットがLightWaveに近いところがあって、マニュアルを読まなくてもLightWaveのショートカットで同じように使える機能がたくさんありました。体験版をちょっとさわって今回のロボットのようなモデルがパパっとすぐに作れたので「これはいい!」と思い、会社に導入してもらいました。
スカルプトにはZBrushを使っていて、それ以外のモデリングを行っていたLightWaveの代わりのような感じでMODOを使っているのでLightWaveとの比較になるんですけど、LightWaveは相対座標系が無いんですよね。たとえばパーツを作ってそれを傾けたらもう対称に操作ができないんです。
MODOは相対座標系のような機能があり、傾けてもそのままモデリングできるのがいいですね。
あとMeshFusionもいいですね。
お客さんからモデルデータを貰って、こちらで有機的な形にブーリアンで抜いたあとに、お客さんからモデルの変更指示がよくあるんです。他のソフトではブーリアンしてしまったらまたブーリアン前からやり直しになるので、ブーリアン前のパーツをずっととっておいてお客様からの要望に合わせてやり直さないといけないんですが、MODOのMeshFusionだとインタラクティブに元のモデルを直すだけでブーリアンが反映されるので修正がとても楽ですね。
基本的に一回作って終わりという仕事ではなくて、お客さんに確認してもらって、要望が返ってきて修正する、という流れの繰り返しなので、MeshFusionはとてもイイです。
CAD系は、RhinocerosとSpace-Eを使っています。
Space-Eはあまり知られていないかもしれないですね。ポリゴンモデリングのソフトとCADソフトでは全然畑が違いますし。
STLですね。
最近STLが流行っていて、工業系のソフトでも結構STLでの入力が可能になっています。モデリングしたデータは最終的にSTLで吐き出して切削の機械にかけるという感じです。
増えていくかもしれないですね、3Dプリンターが流行っていますし。世の中にSTLが増えてきた印象があって、それはやはり3Dプリンターの影響だと思います。
工業製品のデータがSTLで支給されることも増えてきて、いろいろな現場から工業製品のデータをSTLにしたいという要望が出てきています。 ポリゴンのデータはSTLでのやり取りが主流になっているのかなと思います。
先ほどLightWaveとの比較で話した相対座標についてなんですが、アイテムが持つ以外にどこかに保存しておいてあとで呼び出せるといいですね。
たとえば馬の頭をモデリングするとします。馬の顔の部分は馬全体の座標系で左右対称にモデリングして、馬の耳をモデリングするときには耳部分だけで左右対称にモデリングしたいんです。
耳を別に作っておいてあとからくっつけてもいいんですが、くっつけてしまった後でも、馬全体の座標や馬の耳の座標が手軽に選べて編集できるといいですね。
工業系のCADは座標系はパーフェクトに出来るので、そちらに慣れているとポリゴンソフトに移ったときにやりづらいなと感じます。作業平面の機能が近いんですが、もっと手軽にできるといいですね。
あとトランスフォームツールを起動すると表示されるツールハンドルの矢印が邪魔なときがあるので、表示/非表示を手軽に切り替えれるといいですね。何も考えずに粘土をこねるようなフリーモデリングのときには矢印があると作業に集中できなくて、すごく邪魔に感じます。
あれを消したいときは初期設定で変更しているんですが、もちろん矢印を使いたいときもありますし、初期設定まで行くのが面倒なのでもう少し簡単に矢印の表示/非表示を変更できたらよいなと思います。
色々なソフトを触って感じたのですが、モデルを作りたい、モデルを作ることに集中したいのに、そのソフトを覚えることに時間を割かなければならないというのが作り手側にはすごく負担なんです。でもMODOはそれがすごく少ないんです。
たとえば、同じような機能を持った2つのソフトがあるとして、「こちらのソフトではこうして、こうして、こうすればできる」みたいな裏技のような操作をしないといけないことがよくあるんです。そしてそのソフトを良く使っている、そのソフトを愛している人は「その手順がいいんだ」と言うんです。でもその手順はそのソフトでないと役に立たないし、作り手側としてはそんなことは覚えたくないんですよね。だから操作は単純なほどよくて癖も無いほうが良いんです。MODOはそういうところが単純化されていて合理的になっている気がするんです。
ただ純粋にモデリングして形がつくりたいという人にとってMODOは最適なソフトではないかと思います。