福岡でゲーム系をメインに、多岐にわたる3DCGを制作している株式会社ヴィーヴォピクスの林氏にお話を伺いました。
もともとはものを作りたいという考えから、建築や土木橋梁設計などを行う土木コンサルの職業に就いていました。そのときにはCADで設計を行っていたのですが、CADは2Dでしたので、そのうち立体にしたいというか3Dに興味が向いてきました。数年経つうちに、構造計算など誰が作業しても成果物が同じになるような仕事では物足りなくなってきて、年齢的にも20代後半と転職が難しくなる時期になってきていたこともあり、思い切って会社を辞めました。
その当時、映像を作っている友達がいて、CG製作に憧れみたいなものがあったのですが、ただ漠然としたイメージしか持っておらず、ソフトウェアの名前すらも全く知らなかったので、とりあえずカルチャースクールに通いました。独学するにしても、具体的に何の本を買えばよいのかすらもわからなかったんです。そのスクールで最初に触ったのが3dsMaxでした。
そのスクールでは3dsMaxを1〜2年ほど学んでいたのですが、習ったものだけしか作る事ができず、思い描くものを作れない状態でした。そのうち、スクール内で実務参加して制作の実績と経験を積む為のシステムがあり、その中で3DCGを製作するようになったのですが、その部署を統括していたのが、現在ヴィーヴォピクスの代表を務めている天本です。当時、天本はShadeを使っていたので、私のほうでもShadeを触るようになりました。今になるとShadeはモデリング方法が特殊ですが、当時は逆に自由曲面のほうが作りやすく、身近にあるものをどんどん作っていっていましたね。
そうですね。習得するのにさして時間もかからなかったこともあり、結局Shadeの基本コースの講師になりました。ところが、実務で使っているうちに、納品データが静止画であればShadeで問題ないのですが、データで納品となると、当時のShadeの特色である自由曲面では他ソフトとの連係が厳しく、ポリゴンを触らないといけない、アニメーションが弱い、という状況の中で、LightWave 3Dへと移行しました。
ええ。ShadeとLightWaveとはぜんぜん別物なので、改めて習得しなおすという感じでした。ただ、CG全般の知識は持っていましたし、LightWaveは3dsMaxよりは直感的でした。ヴィーヴォピクスが創立される一年ぐらい前、ちょうど今から10年ぐらい前でしょうか、天本に声をかけてもらい、モデリングの仕事を行うようになりました。最初は携帯モデル等を作っていて、ゲーム用のモデルなどを作るようになるのはもっと後ですね。その当時は、LightWaveで十分でした。
ヴィーヴォピクスの社外スタッフが、modoを使っていたんです。ちょうど彼と一緒に作業しているときに、どういう点でmodoに優位性があるのかを聞いて、触ってみたんです。すると、モデリングにおいてLightWaveよりも優れている点がかなりあるということを感じました。LightWaveではプラグインを寄せ集めて使っているような状態だったので、動作が安定しない事もしばしば・・。 modoを触ってみたときに、LightWaveの進化版というか、プラグインを集めて構成していたものが最初から整えられていることもあり、LightWaveに比べ優位性を感じました。逆にMayaや3dsMaxと比較して物足りないところもありますが、一つのモデリング作業を行うまでの手間が少ないので、その点は便利でした。
ゲーム実機のデータを製作する際、modoが一番トポロジが変わりにくいですね。他のソフトだとトポロジをいじった際、UVが破綻してしまうケースがしばしばあり、同じ作業を再三行うケースが有るのですが、modoだととても少ないです。また、modoと他のソフトウェア間のデータ連携は非常に安定していると思います。そういった検証を重ねていくうちに、どんどんmodoの使用頻度が上がってきました。
結局は何を納品するにしても、モデリングにどのツールを使おうが自由なんですが、手足のように動いてくれるという点において、今まで触ったソフトの中ではmodoが一番ですね。
ひとつはペイントの機能です。テクスチャをペイントする場合、UVを開いてペイントソフトに持っていくという行程があるかと思うのですが、それがmodoでは3Dペイントであたりをつけておけるので、ディテールをつめていくのが楽になりますね。
またメッシュベースのスカルプトによって、モデルの形状を変えられるのが結構便利です。顔の形状などをデリケートに整えたりする場合、LightWaveですと頂点を引っ張ったりエッジを動かすことで作業していたのですが、modoではスカルプトを使って微妙に膨らませたり凹ませたり、というのが可能になります。特にモーフターゲットを作るときなどに優れていますね。
あとはプレビューレンダラーです。最終画像をイメージしながら、様々な作業を行ったり、変更を行えるのがいいです。現在はほとんどのソフトでも実装されてきている機能ではありますが、modoは以前から実装されており、バージョンアップの度に高速になってきています。
他にも、LightWaveで作業していたときはレイアウトとモデラーを行き来していたのですが、modoだけである程度の作業を完結して行うことが多いので、オクルージョンやノーマルの転写などがスムーズにできるのがいいです。ベイクが非常に扱いやすいですね。
あと、なんと言ってもモデリングの速度が速いです。
そうですね。早くなります。少なくともLightWaveよりは間違いなく早いですし、Mayaの場合は作業する人のスキルと実装されているプラグイン環境次第というところはありますが、デフォルトの状態であれば、Mayaよりも早くなると思います。
というのも、ひとつひとつの作業レスポンスが明らかに早いというのもありますが、modoのほうが特にUVの編集が優れているからです。Mayaの場合、コンポーネントモードがジオメトリの編集、UVの編集で分かれていますが、modoの場合にはどちらの編集も区別がないので、直感的にすばやく作業を行えるんです。これは大きいですね。
スカルプト性能の向上ですね。この機能の搭載自体は評価すべきことなんですが、細かなディティールに対する作業性がもう一歩という感じです。その部分の向上で、ZBrushや3D-Coatの機能の一部を担ってくれるのではないかと思っています。
また、よく言われていることだとは思いますが、ボーンの機能が実装されるといいです。今はあくまでモデリングツールであると割り切ってmodoを使用していますが、ボーンの機能があれば一通りのことがmodoだけでできます。今までやれなかったことまで、できるようになるということです。
あとは要望になりますが、ジオメトリはそのままで法線の編集ができるようになると良いです。ゲーム用の低解像度のデータでは、たとえば一つにつながっているはずの人体データの一部を分離させないといけないときもあります。そうすることでパーツを入れ替えできるようにするのですが、分離したデータであっても、分離部分の法線データが完全に一致するよう意図的に法線を編集しておけば、完全なスムージングをかけることができるようになるんです。
まず自分が今使っているソフトでできることを、modoで再現してみることから始めてみると入りやすいと思いますし、すぐにそれ以上の機能を体感できると思います。あと、ヴィーヴォピクスのスタッフにはLightWaveを使っていた人、Mayaを使っていた人など、他の環境を触ってきたスタッフがいるのですが、modoには移行しやすいようなインターフェイスが用意されていますので、スムーズな移行が可能でした。
あと、ぜひRay GLを体験してみてください。確認しながらモデリングできると、今までとはまったく違ったワークフローになります。スカルプトの場合も同様で、Ray GLでリアルタイムに確認しながらというのは、他のソフトではあまり経験できないかもしれません。