「アインシュタイン」「ウゴウゴルーガ」といったCG黎明期から、クリエイターとして活躍されている秋元きつね氏に、modoについてお話を伺いました。
テレビ番組「アインシュタイン」「ウゴウゴルーガ」、ゲーム「せがれいじり」などを製作。現在はETV「いないいないばあっ!」「おかあさんといっしょ」など子供向けのCGアニメーションや歌舞伎役者 市川染五郎さんとのコラボ作品を毎年制作する傍ら、ライブ活動や自主映像製作に勤しむ。
18〜19歳の頃、バンドをメインに活動していたのですが、師匠である平沢進さんのところで丁稚奉公みたいな形で手伝いをさせていただいていた折に、平沢さんからAMIGA 1000というコンピュータでCG映像が作れると教えてもらいました。面白いじゃないか!ということで自分でもAMIGA 500を購入し、曲にあわせるための映像をいろいろと作っていたんです。そうこうしているうちに、あがた森魚さんのプライベートバンドでベースを弾いていた時知り合った方が、フジテレビの「アインシュタイン」という番組でスタッフを募集しているということで、そこから仕事として映像製作を始めるようになりました。
ですので、もともとアニメが特別好きとかいうことではなく、音楽のついでにもっと面白いことができる!ということで、CG製作を始めたんです。
今はNHKの子供番組「いないいないばあっ!」の「びりびりびり」というタイトルを年に7〜8本のペースで製作したりしています。このシリーズは今年で3年目を迎えました。他は「ジラファント」という名義でライブ活動しながらCDやDVDなど製作したり、「ドジったーズ」というデジタルブックを月1回のペースで配信しています。
Deluxe Paint(デラックスペイント)ですね。あとはSculpt 3Dとか。ただ当時、Sculpt 3Dは単なる球をレンダリングするのに一晩かかるような時代でしたから、もっぱらDeluxe Paintを使ってました。
Video Toaster(ビデオトースター)が出た頃からはLightWave 3Dを使っていました。「ウゴウゴルーガ」の製作はLightWave 3Dでしたね。
modoは一番最初のバージョン(101)の時に知人に教えてもらいました。LightWaveの作業の流れとあまり変わることがなく、画面デザインも格好よかったのですが、当時はアニメーション機能が実装されていなかったので、しばらくは使っていませんでした。やっぱりLightWaveで作業したほうが速いということもありましたし、もともとそれほどフォトリアル系の高品質なCGは作らないので、だったらLightWaveのままでいいかと思っていたんです。
前バージョンのmodo 501の時ぐらいから、もうそろそろキャラクタアニメーションの機能がつくのではという噂を聞いていたので、そろそろ本格的に勉強しようかと思い、自主制作作品「ドジったーズ」を作りながら勉強していました。
スケルトン機能が実装されたこと、あとパーティクルの機能がいいですね。LightWaveでスケルトンを組む場合、モデラーとレイアウトを行き来しながら調整することになりますので、正直面倒くさいんですね。modoの場合だと、後からいくらでも変えられるし修正もきくので大変楽です。例えばロケータやリプリケータ、インスタンスなどの基本的な仕組みさえ学べば、アイテムやテクスチャ、あげくスケルトンまで同じ仕組みで扱えるんで、新たに学習する部分が少なくていいなと感じました。
modo 601を使い始めてから、実際の製作作業のワークフローはもうmodoだけで完結し、最後の仕上げをAfter Effectsで行うといった形に変わりました。
そうですね。この機能がないと、LightWaveでキャラクタアニメーションをつけて、MDDでデータを持ってくることになりますが、それでは手間がかかってしまいます。
modoの場合はスケルトンの設定方法もかなり簡単ですし、ジオメトリの中心にスケルトンを作ってくれるオプションが用意されているのもいいです。左右対称にスケルトンを書いていくこともできますし、IKの設定も簡単です。
特にレンダリング機能が気に入っています。SSS(サブサーフェイススキャッタリング)機能やGIの機能がボタン一発で手軽に使えたりするのが、とても助かります。同じ画像をLightWaveで作ろうと思ったら、すごく大変なんです。しかもmodoの場合はレンダリング速度も速いですね。
あとはユーザーインターフェイスです。機能が増え複雑になってくると、インターフェイスから想像できない機能というのが増えてくるものなんですが、modoの場合は直感的にほぼ理解できます。そういう点がとてもいいですね。
安定性ですね。あと、それほど複雑ではないシーンでも重くなってくる場合があり、リフレッシュの反応がちょっともっさりしている感じがします。
あとプリセットでスケルトンが提供されていると、すごくいいですね。がっちりスケルトンが組まれたバージョンと簡易バージョン、さらに四足バージョンなどの基本的なプリセットがあると、それを元に後は自分で調整するだけですむので、かなり便利だと思います。
僕の場合は、あまりハイレベルなCG製作を行うわけではなく、基本機能があれば十分に世界が作れますので、他にはあまり要望はないんです。やっぱりリフレッシュ速度かな?
3Dソフトの使い方や考え方の基本って、どれも同じだと思うんです。CG製作を個人レベルではじめたいのであれば、modoのように導入コストが安く維持費がかからない、その上きちんと結果までを持っていけるソフトというのはなかなかないので、オススメだと思います。会社で共同作業をするのであれば、3dsMaxやMayaといった選択肢もあるんでしょうが、個人で自分の作品を作りたいと思うのであれば、modoはメリットが大きいと思います。
あと、modoは意外としきいが低いです。僕の理解度がどの程度なのかはわかりませんが、3Dの基本さえ知っていれば、すぐに使える感じがありますね。
クリエイターを目指す方へのアドバイスとしては、パソコンやネットを使わない部分に意識を持って行くのがいいと思います。パソコンやネットの中で考えていると発想が論理的になりがちで、何かアイデア求められた時の発想が偏ってしまいますしね。
自然物や物質、生命の情報量や熱量はスゴイですから、今日は天気がいいなぁとか、このニンジン旨いなぁとか、どんな些細な事でも、身体で感じる事は人類共通で、流行に関係ない部分だと思うんで、そこを軸にすれば迷いを減らして効率上げられるんじゃないでしょうか。
それと常々意識してるのは両親や甥、姪など子供たちが見て面白がるかな?という所です。パソコンやネット、CGの事なんかまったく知らない人が観ても楽しんでもらえる部分が大事だと思います。厳しいですけどね。