広告画像の世界において、MODOを用いて美しい作品を生み出されている「こびとのくつ株式会社」の吉岡 大志氏にお話を伺いました。
大学で絵画を専攻した後、レタッチャーとして就職。その後、広告画像に3DCGを取り入れることで、表現力の幅を広げ、様々な作品を生み出す。Luxologyのギャラリーにも作品を投稿。
小さい頃から絵が好きで、大学では絵画を専攻していました。
ずっと絵に関係する仕事でと考えていたのですが、デジタル技術の方にも興味があり、レタッチと3DCGを扱う会社に就職しました。当時はレタッチのみの担当で主に広告写真やカタログ画像のレタッチをしていました。次第に3DCGの画像のレタッチもやることが多くなりましたが、3Dの担当者に修正指示を出しているうちに、自分でも操作を覚えればある程度できるかなという感触はありました。
はい。ほぼPhotoshop一本で行っていました。ただ、レタッチの技術というのは、ある程度のレベルまで行くと頭打ちになってしまうというか、Photoshopだけの技術でやれることというのは限られていて、あとは周辺技術との組み合わせであったり、いかに工夫するかというところや、物の見せ方をどのようにすればより美しく見せられるかといったクリエイティビティの勝負になってきます。表現の幅を広めるために、周辺の技術を取り込もうとカメラを買って撮影の勉強をしたり、3DCGの勉強を始めたという感じでした。
本格的にアプリケーションを自宅に買って始めたのは2年前、震災で仕事にまとまった空きができたので、modo 501を購入し、自宅のMacProで始めました。
それまでは体験版などで他のソフトを試しながら、3Dのソフトの基礎を覚えるというレベルで、少しずつ勉強していました。
いいえ。それまでにMayaや3dsMaxを覚えようと、チュートリアルを試したり、参考書を買って読んでみたりしていました。ただ、他のソフトだと何かを作ろうと思った時に「作り方を考えてから作る」といった感じが強くて馴染めませんでした。MODOの場合だと、モデリングしつつプレビューを見ながら調整を行うという「作りながら考える」ことができるソフトだと感じました。あと、インターフェイスがすごく整理されていて、馴染みやすかったんです。ソフトを極めたいわけではなく、ものを作りたいというのが基本にあり、MODOの場合はその入り口がすごくスムーズでした。インターフェイスは重要なんです。インターフェイスで引っかかるものがあると、感覚的なところでつまづきがあってりして結果的に生産性を落としてしまうので。
MODOのいいところはインターフェイスの美しさ、リアルタイムのプレビュー、モデリングのしやすさ、あとレタッチのしやすさなどがあります。レタッチは結局のところ、選択範囲を作るとかマスクを作るといったマスク処理に時間を取られることが多いんですが、MODOだとレンダーアウトプットで手間をかけずにアルファを簡単に出せるのが良いですね。
画像のレタッチ、すなわち画像の合成や、画像を加工したり描きこんだりして画像の見栄えを良くすること、いちから手作業で何かを描き出すこと、3Dで形のないものを作り出すこと、デザインすること、などです。アナログで描けるということを強みにデジタルに生かしています。
作るものによってかなり変わってきますね。ほとんどのケースでは、アートディレクターの方やデザイナーの方のラフを元に、ある程度形にできた時点でチェックだしをしてフィードバックをいただきながら、まずは基本的なイメージを詰めていきます。
次にイメージが固まったら、より美しく見せるライティングやテクスチャリングを詰めてレンダリングまでもっていきます。
ここまでが3Dの作業になるのですが、最終的にレタッチの作業まで一人でやることが多いので、2Dと3D両方やる人間の強みとして、「ここまでは3Dでやって、ここからはレタッチで」といったさじ加減を自由にできます。
3Dが苦手とする表現は2Dで、2Dで手間がかかりすぎる箇所は3Dで、という風に、頭の中で組み立てながら作業できるので効率的なんです。
テストレンダリングの段階で軽くレタッチを入れてみて、そこの線引きをしています。
最終的には3Dだけでも完成できるぐらいの仕上がりを目指して、そのあとどうしてもうまくいかないところを2Dで描きこんだり、部分を強調したり、色調を整えたりして、完成形に仕上げていきます。
そうですね。まるっきり置き換わる感じになります。その分3DCGの作り手は今までカメラマンの方や照明技師の方がやっていた、物の見せ方やライティングの知識が必要になります。
ライティングとマテリアルに特に時間をかけています。基本的には画像の見栄えというのは、HDRやエリアライトのライティング、それにマテリアルの反射で何が反射しているのか、グラデーションがどうついているのか、というのが大きいです。そこに時間をかけたいので、逆にモデリングにかける時間はなるべく削減したいと考え、モデルデータあるときにはなるべく使わせてもらって、画質や見栄えといった点に時間をかけれるようにしています。後は、レタッチにも時間をかけるようにしています。広告写真ではよくあることなんですが、ある程度、光の法則などは無視して、最終的にもうちょっとこの光を強調したいといった処理も必要となりますので。
基本的には各パーツのアウトプットとアルファ、それに反射ぐらいですね。スペキュラはそれほど使いません。スペキュラってどうしても一律にぼけていくような感じの光になってしまうので、リアルな反射を求める時には使わないんです。
メリットは物理的な制約がないことです。ありえないぐらい大きくて継ぎ目のない光源でシーンを作れること、撮影機材が必要でないこと、また、まだ製造されていない商品で広告が作れるようになったことは、広告画像にとって大きな変化だったと思います。3DCGですと、少しずつ角度を変えて何度でもショットを撮りなおすことができますし、いらないものは作らなくて良いというのがあります。
実際の撮影の場合、撮影機材や照明機材の一つ一つの取り扱い方自体が新規参入にとっての大きな障壁となっていたのですが、3DCGの場合、一度ソフトを覚えてしまえば、あとは作り手の目や技術次第ということになります。 デメリットであり、メリットでもあるのが、CGだとなんでも簡単にできると思われているところがあることでしょうか。間違いではないのですが、もちろん時間にも手間にも限度はあります。デザインも細部はこちら任せになることが多く、撮影するときよりもデザイナーさんから来るラフが固まっていなかったりします。その分、多くを任せていただけるのでやりがいはあるのですが。
アニメーションやパーティクルはほとんど勉強できていないのですが、701ではポリゴン数の多いシーンでの操作の重さが、かなり改善されたと感じています。
今までの3DCGと同じ道をたどるのではなく、MODOらしく違った切り口で簡単にできるところは簡単に、という姿勢を崩さずに作っていっていただきたいと思います。
要望としては、スカルプトでメッシュを細分化するブラシがあるといいですね。それができると、さらにMODOだけで作業ができるようになります。あとはヘルプに記述のない設定項目があるので、ヘルプが網羅的であること、またPSDのレイヤー書き出しで16ビットのレイヤー書き出しができるといいと思います。PSD書き出しではPhotoshop側が2GB以上をサポートしていないので、2GB以上も読み出せるPSB形式もMODOでサポートしてもらえるといいですね。
チュートリアルをたくさんやることでしょうか。自分も覚え始めの時に、かなり集中して何本か買ってやりました。特にレンダリングの設定周りのところとかが、わかりやすかったですね。MODOは触ったら触っただけ、結果の出るソフトだと思います。