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Takumi氏によるモデリングテクニック v1

今回は、弊社や本家Luxology社にも画像を提供いただいているTakumi氏に登場いただき、 modoによるモデリングテクニックとLightWave 3Dによるレンダリング迄の行程について解説いただきます。第一回は自動車のワイパーを題材としたモデリングテクニックです。全三回を予定

Takumi氏は個人のブログ「modo mode」でも車を題材とした事例やTips等を公開されています。
http://popover.blogzine.jp/weblog/

modoの最大の特徴のひとつであるツール合成機能は直感的なモデリングを可能にします。
自動車のワイパーのように何段階もの回転と曲線パーツで構成され、それぞれが関連性を持つようなモデルを作成する場合でもトリッキーなテクニックを習得し たり、特殊なプラグインを探し回る必要はありません。現実空間でのオブジェクトの組み立て、取り付け、変形のイメージをそのままモデリングに反映させるこ とができます。

今回は簡単なモデルでのワイパー取り付け工程を紹介することで、ツール合成によってもたらされる modo の直感的モデリングを紹介したいと思います。

ここでは、すでにボディは完成し次にワイパーを作る段階であるとします。

まず、新規レイヤーにグリッド平面を自動車のボディと仮定してここに取り付けられた状態をイメージして回転や湾曲のない形でモデリングします。

一連の組み立て作業が終わったらボディに取り付けるわけですが、相手は必ずしも垂直面、水平面とは限りません。 むしろそのような場合はまれで、ほとんどの場合が斜面となっているでしょう。しかし、このような場合でもプラグインや慎重に回転させるテクニックなどは必要はありません。コピーして貼り付けるだけです。

ワイパーをコピーし、ウィンドウパーツのレイヤーを前景にします。取り付け先のポリゴンにマウスポインタを置き、Home キーを押すとWork Plane(作業平面)がそのポリゴンノーマルに合わせて移動、回転します。
最初に作ったワイパーは、あとで再利用できるようにそのままにして新規レイヤーに Paste Tool(貼付けツール)で貼り付けます。

貼り付けが終わり位置を調節したら、Work Plane(作業平面)はこのあと特に必要ではないのでリセットしておきます。

次に、ウィンドウの位置までワイパーを回転させなければなりませんが、ここでも現実空間での作業イメージ同様です。つまり、根元から先端に向かって回転させたくないパーツを固定しながらそれ以外を順次関節部分の軸で回転させていきます。

まず、今の状態では水色のガラス面よりワイパーブレードが下にあるので根元部分を軸にして上方へ回転させなければなりません。そのために必要なことを整理してみると次のようになるでしょう。
1.回転は青いパーツを中心とする
2.回転軸の方向は取り付けられたボディ面に垂直、つまり青いパーツにとってのローカルな向きである。
3.固定しなければならないパーツはなく、ワイパー全体を回転させる

たったこれだけをイメージできたら、回転のために Axis Rotate(軸回転)を起動します。

すると、デフォルトで Auto Activate(自動的にアクティブにする)がオンになっているためZ軸が回転軸となった状態でハンドルが表示されます。
Tool Pipe の状態を見ると、Action Center Auto(アクションセンター(自動)), Action Axis Auto(アクションアクシス(自動), Axis Rotate(軸回転)の三つのツールが合成されているはずです。

しかし、このままハンドルを操作したのでは、必要なことの3.だけしか満たしていないため望む結果は得られません。

1.2.の条件を満たすため中心と軸方向を設定するツール Action Center(アクションセンター)と Action Axis(アクションアクシス)の二つを別のものに置き換えることにします。

これらはそれぞれ、Automatic(自動), Element(エレメント), Local(ローカル), Selection(選択), Screen(スクリーン), Origin(原点), Pivot(ピボット)の七つから選択できますが、特定のパーツのエレメントを中心にできる Action Center Element(アクションセンター(エレメント))と、同じくそのエレメントのノーマル方向を軸とできる Action Axis Element(アクションアクシス(エレメント))に置き換えることにします。

2.に関しては Local(ローカル)も利用できそうですが、形状によっては望ましい結果が得られないこともあります。そこで、より柔軟性の高い Element(エレメント)を選択しています。

幸いにも modo には Action Center Element(アクションセンター(エレメント))と Action Axis Element(アクションアクシス(エレメント))の合成ツールである アクションセンタープリセット”Element”(エレメント) が最初から用意されています。メニュー、フォーム、キーいずれからかこのプリセットを呼び出すと、Tool Pipe の合成状態は、Action Center Element(アクションセンター(エレメント)), Action Axis Element(アクションアクシス(エレメント)), Axis Rotate(軸回転)の三つのツールに変化します。

これで準備は整いました。あとは青いパーツの回転中心軸にあたるエレメントをクリックするだけですぐに回転させられる状態になりました。

これまでの実際の操作を振り返ってみると Axis Rotate(軸回転)の起動、アクションセンタープリセット”Element” の呼び出しをしただけです。それぞれのツールがどのような意味を持つのかを理解していれば一瞬で作業は完了するはずです。さらに、もしもこの二つの工程を 一つにまとめたければ、Action Center Element(アクションセンター(エレメント)), Action Axis Element(アクションアクシス(エレメント)), Axis Rotate(軸回転)が表示された Tool Pipe 上でオリジナルのツールとしてプリセット保存も可能ですが、おそらくその必要すらないでしょう。

ツールの操作はビューポート上に表示されたハンドルをドラッグするだけでなく、ツールプロパティフォームで数値入力することもできます。

このようにしてワイパー全体の回転が終わったら、次は黄と赤のパーツをウィンドウに接近するように回転させます。要領は同じですが一点だけ青いパーツの固定が必要になることが前回と異なります。

まず、ポリゴン選択モードであることを確認し、任意の青いポリゴンをダブルクリックします。これにより一団のパーツが全選択されます。

この状態でjキーを押し lock.selected(選択をロック)を行うと以後、このパーツはどのようなツールに対しても影響を受けなくなります。

もちろん、ロックする変わりに hide.selected(選択を非表示)でもかまいませんが、ここではより直感的に常に全体を把握しつつ作業できるようにこのような方法をとっています。

ロックできたら先ほどと同様に Axis Rotate(軸回転)を起動し、アクションセンタープリセット”Element”(エレメント)を呼び出して黄色いパーツの青いパーツとの連結部の回転中心軸にあたるエレメントをクリック、ハンドルを操作し回転させます。

最後に赤いパーツをワイパーブレードの中間点がウィンドウに接する角度に回転させます。黄色いパーツをダブルクリックし、これも lock.selected(選択をロック)して今までと同じ作業によって理想的な角度になるまで回転させます。

回転に関しては以上で終了です。次は赤いパーツのワイパーブレードがウィンドウ曲面にフィットするように曲げ加工します。

回転作業の結果、現在ワイパーブレードの中間点はウィンドウに接しています。ここを基点としてブレード両端へ向けそれぞれ Bend(ベンド)で曲げていきますが、その際必要となる条件を整理します。
1.曲げる範囲はブレード中間から端までの限定された範囲であること
2.中心はブレードの中間であること
3.軸はエレメントのノーマル方向から自由に選べること
4.曲率は始点から終点まで一定とは限らないため、任意に調節できること
以上を満たしたうえで Bend ツールで曲げるわけです。

現在、赤いパーツ以外はすべてロックされているためこのままでも作業を続けることができますが、以降の画像では見やすくするためいったんすべてのロックを解除し、その代わり非表示にしてあります。

まず、Bend(ベンド)を起動します。すると Auto Activate(自動的にアクティブにする)はオフのためビューポートにはツールハンドルは表示されませんが、Tool Pipe を見ると Bend(ベンド)がハイライトされていることがわかります。先ほどの作業によって Action Center(アクションセンター)と Action Axis(アクションアクシス)は、それぞれ Action Center Element(アクションセンター(エレメント))と Action Axis Element(アクションアクシス(エレメント))であるはずですが、もしほかのツールになっていたらアクションセンタープリセットから “Element”(エレメント)を選びます。これで2.3.の二つの条件はクリアできます。

1.の条件は、Bend(ベンド)ツールの基点、終点を赤いパーツ中間のエレメントから端のエレメントに固定するという意味です。つまり、ツール自体を 「エレメント」に「スナップ」させればよいということになります。そのために Tool Pipe に Geometry Snap(形状にスナップ)ツールを加えます。このツールプロパティのモードをエッジ、強さは15のまま、レイヤーを前景にします。これで1.もクリアし ました。

残る4.についてですが、Bend(ベンド)のヘルプには「ベンドツールは自動的にベンドツールの基点に向かってその値を減衰させていきます」とありま す。そこで基点から終点までの曲げの大きさを調節するためにフォールオフツールの中から線形フォールオフを加えます。プロパティは、シェイプをカスタムに しておきます。

これでワイパー用のベンドツールが完成しました。

回転のときよりも若干工程が増え、このあとも繰り返し呼び出す必要があるため、すべてのツールが合成されたところでこれをツールプリセットとして保存しておきます。

また、必要であれば Form Editor(フォーム編集)でボタンとして登録したり、キーに登録すれば次回から簡単に呼び出すことができます。

あとはこのツールを呼び出し、Bend(ベンド)とフォールオフのハンドルをエッジにスナップさせ、フォールオフの In, Out を調節しながら Bend(ベンド)で曲げて完成です。

今回の内容は、特殊な状況でのモデリングではありますが、頭に浮かんだイメージをディスプレイの中に表現するまでの一連の作業の流れはどのような場面であっても応用できます。
このような直感的なモデリングを可能にした modo について以前フォーラムで Brad Peebler 氏からもらった書き込みに対するReplyの一部を紹介します。

We wanted to make a toolset that was like building blocks.
Once you learn one of the blocks you always know it and can build other behaviors from there.
It is a simple concept but in implementation it seems to make modo a lot more intuitive.

第一回/第二回/第三回

2014年5月10日